2014年5月29日木曜日

旅守。観光より、深みのある旅を


—その1 理想的な「観光の形」を追い求めて
 近年の観光は、インターネットなどの普及により、どんな場所でも事前に下調べができ、確認作業のように出掛ける旅の形が増えました。その数日間の滞在で、その地への愛着は生まれず、その地に2度目に訪れることはないのではないか。と考え、旅守プロジェクトは、京都精華大学人文学部、当時3回生だった大津まどかを中心に「新しい観光の形」を探る活動として動き出しました。



 私の理想と掲げる旅の形は、訪れる人と地域の「双方向関係」から生まれる、何度も訪れる中で深められる関係づくりや、そこから生まれる愛着から自然とうまれるリピーターが増えるというものです。また、旅守プロジェクトは、観光地ではない地域の観光のあり方を見つけ、それらの仕組みを考え、トライ&エラーでつくっていくプロジェクトです。



—その2 まず与謝野の魅力を地域の方と再発見する
 旅守プロジェクトでは、まず、地域の様々な方から、与謝野町を教えてもらうところからはじまりました。それは、文化、歴史、遊び…などその地に根付く様々なことです。そして、与謝野という場所を地域の方と一緒に再発見する活動として「地域密着看板よさのーと」という看板製作・設置を行いました。これは私たちが活動する与謝野町滝・金屋地区に根付く言葉や文化などを地域の方からヒアリングし、地域にとって当たり前(=日常)であり、私たち学生にとっての非日常であることを基準に、様々なその地に根付く言葉や文化を紡いで看板に落とし込んだものです。その看板をみた地域の人同士で会話がうまれ、外からきた人が「なんだろう?」と思い、地域の方との会話のきっかけになるような機能として看板製作を行いました。(2012年)


 その看板が1年経ち、その地への浸透していく形を考え、昨年度設置した看板を巡るツアーを行いました。(2013年)



—その3 歴史あるもの、かっこいいもの、再発見
 滝・金屋地区には江戸時代から伝わる大きな地図があります。その地図は地区ごとに大切に保管されており、年に一度、防虫のために干す時以外、表に出ることはありません。その為、その地区の区長さんなど役員の方以外には、存在を知られていないという現状があるようでした。そこで、古地図を撮影し、綺麗にパソコンに取り込みました。その上で、その地区にまつわる話のアニメーションを制作、6m×2mの巨大スクリーンに投影しながらの読み聞かせイベントを行いました。



—その4 外から与謝野へ、訪れる形を考える
 1年目は「内側から内側を知る活動」として活動してきました。それに加えて、2年目は「外側から与謝野を知ってもらう」ことをプラスした活動を行ってきました。それはXキャンプの参加学生として与謝野の地域の方々と関係を築くだけでなく、外部から地域に「訪れる」ということについて考えていきました。
 与謝野町には、観光資源として「古墳」「丹後ちりめん」「サイクリングロード」「豊かな自然」「天橋立の景色」…などがあります。その中から「丹後ちりめん」に着目し、「丹後ちりめんスタディツアー」を企画、調整、実行をしました。
 京都Xキャンプの主な活動地域は与謝野町滝・金屋地区ですが、野田川や岩滝というメインの活動地域から少し離れた地域まで、与謝野を大きく捉え活動を行いました。また、織物関係者との関わり自体が初めてだったので、まずXキャンプの主旨を説明することと「丹後ちりめん」について教えてもらうことから始まり、種類、素材、考え方など多くのことを教えて頂き、その上でツアーを企画しました。



 はじめはMKバスとの連携をはかり、バスツアーを企画、募集をかけ、大規模なツアーを行おうと考えていましたが、人を集めるのは案外大変で、「距離」「時間」「価格」など様々な要素をクリアすることが大切ということを、身をもって知りました。結果、少人数ではありましたが、ツアーを行い、織物に興味のある方に出向いてもらい、ちりめん関係者とのお客さんとの関係が今でも続いているようです。「丹後ちりめんを知る=与謝野の人を知る=与謝野を知る」ことに繋がっていったのではないかと考えています。企画、アテンドまで行い、リアルなお客さんの反応が見ることが出来るのが、旅守の魅力だと考えています。



—その5 旅からはじまる関係作り
 「与謝野から与謝野へ」「外地域から与謝野へ」旅や観光という「でかける」キーワードから生まれる関係づくりのきっかけや種を作っていくことを2年間考えて、実行してきました。今後「よさのーと」が地域に浸透し、様々な世代を超えた会話のきっかけが生まれること、外と内を繋ぐ関係づくりの一環をつくっていきたいと考えています。多くの観光客がきて、去っていくのではなく、少しずつでも長く付き合っていける関係がひとつでも生まれることを今後も作っていきたいです。



【旅守学生メンバー】
○京都精華大学
人文学部 大津まどか/山藤勇輝
芸術学部テキスタイルコース 石原早智

○京都大学
総合人間学部 石崎麻依
文学部 日下千夏

○立命館大学
法学部 手島慧

○嵯峨芸術大学
観光デザイン学科 川崎栞

○京都工芸繊維大学
デザイン経営工学課程 中村琢
造形工学課程 森岡里奈

○京都女子大学
家政学部生活福祉学科 河部祐里

○京都府立大学
環境デザイン学科 和田優人/永井麻美

○沖縄県立大学
美術工芸学部造形芸術研究科 西馬ひかる

○同志社大学
法学部 杉山空央

○武庫川女子大学
生活環境学部 田中沙樹

○大阪芸術大学
芸術学部放送学科 海島芙実



2014年5月4日日曜日

人守。顔が見える関係、交流する以上の関係がうまれる。

—その1 学生と地域の方とが素で話せる場をつくる

  学生と地域の方と素で話せる場所がつくりたいと考え、京都大学経済学部の当時4回生だった大谷祐紀を中心に、交流出来るカフェを運営する活動として、人守プロジェクトは動き出しました。カフェ運営にむけて区長さんなどの地域の方へヒアリングを続けていくと「独居老人が安心して暮らせるように、声をかけてあげてほしい」という要望が出てきました。その要望をカフェと結びつけ、地域の方に出てきてもらう形ではなく、私たち学生と移動式のカフェが、地域の方々に「会いにいく」という形態をとることにしました。 

01 ヒアリング

—その2

 Xキャンプだからこそできること  私は経済学部なので、カフェの運営や、交流に興味がありましたが、カフェの形や構造については全くの素人です。「移動式カフェをつくりたい!」という気持ちだけでは、カフェの構造は分かりませんし、どうしていいのかわかりません。他のプロジェクトに工学部に在籍する学生がいたので、構造について図面をひき、工具の使い方など教えてもらいながら、移動式カフェの製作を行いました。

02 西川指導

 また、地元の若手建築グループである「椿築輪(つばきのわ)」の皆様に手伝ってもらいながら、なんとかカフェを完成させました。
  03 椿築輪指導

互いの学んでいる学問や専門性を活かし合い、地域の方にもお世話になりながら(ご迷惑をおかけしながら)、ものごとを進めていけるところがXキャンプの良さだと感じています。
  そうやって完成したカフェをごろごろと引っ張り、押しながら、滝・金屋地区の公民館周辺を練り歩きました。公民館ごとにカフェを開き、地域の住民の方と交流を図るなかで、顔のみえるような関係をつくり、孤立するような人を減らしていく仕組みとして機能しないかと考え、取り組みを続けました。徐々に地域と学生と顔の見える関係がうまれはじめ、Xキャンプの学生が、与謝野町に1ヶ月滞在し、活動しているということの周知の入り口として活動してきました。(2012年)
  04 移動ひるカフェ


—その3 会いにいく、交流の次のステップへ

 2年目には地域の方とどのように交流するかを主に考え、活動を進めてきました。1年目の「独居老人問題」に加えて、地域には様々な問題や制度があります。そのひとつに「隣組」に係る問題があります。かつては「隣組」という小さな単位のコミュニティで、近隣住民同士、お葬式や結婚式などをまかなっていく風習がありました。しかし、その風習は近年薄れつつあり、数年後にはその風習もなくなり、近隣住民間での団結や関係性が薄れていくのではないかと人守プロジェクトでは危機感を覚えました。そこで「隣組」に着目し、地域住民と学生だけでなく、隣近所同士で、老若男女様々な方々でしっかりと顔の見える「交流」について考えていきました。昨年に引き続き移動式カフェを利用して、9つの地区をまわりました。
  05 よるカフェ

 各隣組によって性格が異なり、子どもたちが元気な地区、農家の多い地区など様々な特色があることが分かり、それら地区ごとに隣組ペーパーという地区に密着した内容のフリーペーパーを製作し、配布しました。


 —その4 地域と顔見知りになる、深く浸透していく

 2年目(2014年)は移動式カフェだけでなく、「学生が地域の人に会いにいく」というスタンスは変えず、それぞれ学生の得意(似顔絵)や趣味(お酒を飲む)を通じて、様々な世代とコミュニケーションをとる活動を行いました。似顔絵や晩酌という、様々なコミュニケーションの方法で、幅広い年齢層の地域住民の方と交流もはかりました。

06 似顔絵

 地域に密着し、ゆっくりと浸透していくところが人守らしいプロジェクトの進め方です。人守を通じてXキャンプが地域に浸透し、活動内容や、活動の趣旨他をお伝えするきっかけにもなりました。また、住民の方々に普段だったら聞けないこともコミュニケーションの中から、聞くことも出来ました。
  07 晩酌


—その5 場づくり→交流、それだけじゃない関係をつくる

 今後、カフェなどの交流できる場やツールを通して、広めることの次のステップになるような活動を行っていきたいと考えています。人守プロジェクトは、カフェという形態に留まらず、様々な年代、お嫁さんとかそういう様々な関係を越えて交流出来る形をつくっていくプロジェクトです。人との交流や場作りに興味のある方はぜひ一度ご連絡下さい。
  08 ピース


【人守学生メンバー】
○京都大学
経済学部 大谷祐紀
文学部 日下千夏

○京都精華大学
人文学部 竹下瑞章/伊東絢野/嶋田充孝/上井頼彦
マンガ学部ギャグマンガコース 藤本早紀

○嵯峨芸術大学
観光デザイン学科 川崎栞/高橋萌/飯川友紀子
短期大学部洋画領域 富田望由/松本さり
造形学科版画分野 片岡愛貴
イラストレーション学科 西宮尚子/片平あゆみ

○神戸学院大学
経営学部 細川智代

○京都工芸繊維大学
デザイン経営工学課程 加藤幸佳

○神戸大学
医学部 塚本康司

○立命館大学
政策科学部 松田謙

○摂南大学
理工学部都市環境工学科 西田有希

2014年5月1日木曜日

食守。地域の食の美味しさを知り、様々な世代へ広げていく。

—その1 「この地域には特に郷土料理はない」という一言。

  与謝野町のある丹後地域では、昔から米をはじめとした農作物がよく採れ、米の食味ランキングにおいて最高の「特A」を得たコシヒカリの栽培をするなど、農業が盛んです。ですから町内に大きな農業生産法人が3社もあり、その内2つの法人(あっぷるふぁーむ、誠武農園)が私たちの活動地域である滝・金屋地区に存在します。また専業の個人農家も多く、それぞれのこだわりを持ちながら四季折々、様々な農産物を生産されています。
  農業風景

 しかし、豊かな農産業をもつ一方、地域の方々に話を聞くと「この地域には郷土料理がない」と口を揃えていいます。その一言を聞き、普段から美味しいものを食べることに関心のある京都工芸繊維大学の当時3回生だった松本翔太郎を中心に食守プロジェクトは始まりました。また、その一言から、地域に潜む潜在的な郷土料理や食文化を見つけるべく「食を探る活動」の1年目が始まりました。
  松本翔太郎


—その2 農家に弟子入りすること。生活から食文化をひも解いていく。

  まず、食材の旬を敏感に捉えながら与謝野の地域食を守っているのは農家であると仮定し、農家に着目しました。夏のキャンプイン期間を利用して地元農家に弟子入りし、毎日農作業の手伝いをし、昼夜飯などを一緒に頂き、生活を共にするなかで、この地域に根付く特有の味や生活から生まれる知恵などを探っていきました。(2012年)
  弟子入り

 僕は、奥滝という滝地区の中でも一番山の上に住む山本孝市さん・夏江さん夫婦の元に2週間ほど通い、主に、野菜の袋詰め作業を手伝わせてもらいながら、夏江さんの作る昼・晩飯を頂くことで、農家の食に触れました。それらは、農家にとって、「当たり前」であり、「日常的な食」です。その食に触れることで暮らしの知恵、例えば、山菜はあそこに行ったら採れる、ナスはこうやって煮たら美味しい…などです。そういった「ちいさな個々の日常食」をたくさん知りました。
  山本孝市家


—その3 郷土料理を身近に気軽に片手でどうぞ。

  1年目の「農家にとっての日常食」を探る活動をふまえ、2013年は「地域の食」を日常的なものとしてだけではなく、「特別な日」に頂く「丹後のばらずし」に着目しました。「丹後のばらずし」とは昔からハレの日や祭りの時などに丹後地方で食べられている、甘い鯖のおぼろ入りのちらし寿司のことです。そのばらずしを、日本人なら誰でも好きな「おにぎり」の形にし、手軽に美味しく食べられる形を作っていきました。
  ばら寿司おにぎり

 その作る過程を「みのり会」という、味噌作りなど、地域食について活動されている団体に所属されている和田さんや西原さんに意見を頂きながら、どこか懐かしいあの与謝野で食べる味を目指して改良を重ね、見栄えも試行錯誤しながら作っていきました。(2013年)
  ばら寿司おにぎり2

 この2年間を通し、個々の食卓で生まれる、家庭の味から与謝野に根付く伝統的なものを感じたり、おばあちゃん世代からお嫁さん世代へ「食文化の継承」があまり行われていないことも知りました。つまり、若い人の料理はどの家庭でも一般化されており、地域の食を知らないから、作れないという層も存在します。山本さんや和田さん、西原さんに教わった「ちいさな家庭の知恵」が、次の世代に薄れず伝わる形をこれからも追究・実践していきたいと考えています。
  話聞いてる


—その4 これからも地域の食や旬に着目する。

   夏の1ヶ月、地域の農作物や食に触れていく中で、初夏に採れる皮の柔らかいなすは、旬をすぎて次第に秋には皮が分厚くなり硬くなるという変化を見ることができます。普段、都市部で生活する私たちにとって、そのこと1つとってみても気づく機会はありません。食を大切にしている地域だからこそ気づかされることが往々にあります。毎日行う食事だからこそ、旬を舌で感じ、その地に潜在している食を考えることが出来ると感じています。
  なす

 野菜の旬や地域の食文化など一緒に見つけ、これからの食について考えて見たい人はぜひご参加ください。


【食守参加メンバー】

○京都工芸繊維大学
デザイン経営工学課程 松本翔太郎

○京都精華大学
人文学部総合人文学科 河田美琴

芸術学部テキスタイルコース 切東さや

○京都嵯峨芸術学大学
メディアデザイン領域 中村彩乃
短期大学部グラフィックデザイン領域 藤澤あや

○立命館大学
政策科学部 松本雄介

○京都大学
文学部 鈴木由李絵

○同志社大学
文学部英文学科 青木博之

○成安造形大学
芸術学部芸術学科 後藤美子